おんなはつらいよ 

世界の国からこんにちは

食べることは生きること

 

 四年ぶりに訪れたモロッコの旅は、大好きなマラケシュからスタートした。

スペインのアルへシラスからフェリーに乗って、念願のジブラルタル海峡を渡った。

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四年前、まだまだ旅の初心者だった私と友人にとってこの地は、目から鱗なことだらけ。

 今思えば情報不足もいいところで、とにかく行き当たりばったり、珍道中という言葉がぴったり。
10代故の怖いもの知らずな精神で、アフリカ大陸の端っこに女2人で乗り込んでいった。
そしてこの旅で味わったこと全てが、その後の旅の基準となり、私と友人は刺激を求めて、あまり周りが旅していないマイナーな地をセレクトするようになった。
要するにちょっとやそっとのことじゃ驚かなくなるほど、モロッコで体験した数々の出来事は刺激的すぎたのだ。

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魅力がありすぎるモロッコ。衣食住どれを切り取っても面白いこの国で、私はモロッコの食文化に胃袋と心を鷲掴みにされたのだった。
特に私を夢中にさせたものは二つ。
 
一つ目はスークと呼ばれる市場。
スークは地元の人たちの生活の場。
マラケシュやフェズなどの観光地のスークは、入り口に近いほど観光客向けの土産物屋が並ぶが、奥に進めば進むほど、ローカル御用達エリアを見ることができる。
観光よりも人々の暮らしに興味がある身としては、この奥の奥にある人々の生活エリアこそが最大の魅力だ。
スークには、野菜や果物、肉や魚、パンや菓子、スパイス。ありとあらゆるものが、生き生きと並んでいる。

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特に面白いのは肉屋さん。
解体された羊や牛がどーんっと店先にぶら下がっていたり、様々な部位がドカッと並べられている。
ニワトリをその場で絞めて、捌きたてを売っている店があれば、違う肉屋ではラクダの頭が吊るされていたりする。
 
日本じゃお目にかかれない光景をグロテスクだと思う人には、悲鳴をあげたくなるエリアかもしれないが、市場の生命力に溢れた活気ある空気がたまらなく好きで、歩く度に釘付けになってしまう。
釘付けになりすぎて、ついついシャッターを押し忘れてしまうのだ。
スークの写真が意外と少ないことに後から気づいた。

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もう一つはマラケシュの屋台。
マラケシュ最大の見所「ジャマ・エル・フナ広場」には、毎晩無数の屋台が建ち並び、夜が深まるほど活気づく。
夕方から深夜二時ごろまで毎日やっているこの屋台軍団は、高い所から見下ろすとまるで火事でもおきているかのような光景が広がる。
 
屋台は毎日昼過ぎになると、各店の人々が一から組み立てる。
これがかなり重労働そうに見えるのだが、彼らは慣れた手つきでスイスイと組み立てていくのだ。
気づけばさっきまで更地だった広場に、立派な屋台の群れが現れる。
この組み立て作業を、高台にあるお気に入りのカフェで日記を書きながら見下ろすことが毎日の日課になっていた。

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フナ広場の屋台には、全て店番号がついている。
「羊」「かたつむり」「お菓子」といったメニューを絞っている店や、ケバブやソーセージ、サラダやスープなど色々ある「何でもレストラン」があり、合わせると100店舗ほど並ぶ。
 
数ある屋台の中でも、私は羊料理を扱う44番の店が大のお気に入り。
この店は観光客だけではなく、地元民にも大人気で、いつ来ても混んでいた。
大鍋と羊の頭が並ぶ店先は、インパクト大。
よほど味と人気に自信があるのか、他の店のように派手な客引きは一切しない。
調理しているおじさんたちも、どこか職人気質で黙々と調理している。

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 この店の人気メニューは、「タンジーヤ」という羊肉の煮込み。

大鍋で煮込んでいて肉が柔らかい。少しカレーのような風味がして臭みもなく、毎日食べでも飽きない。
これを地元の人たちはパンを上手く使って、右手で食べるのだ。
 
他には、羊の舌や腸などあらゆる部位を刻んで茹でて、スパイスを振りかけた羊ミックスも最高に美味い。
イスラム教の国なのでお酒と一緒に食べられないのが残念なくらいビールに合う味だ。

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個人的なお気に入りは、羊の脳みそ。
茹でて刻んでこちらもスパイスを振りかける。
一度醤油を持参してかけて食べたてみたら、白子と似た味がした。
大事なのは勇気。口にすると案外馴染みの味に似ていたりする。

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私はこの屋台にマラケシュ滞在中の一週間、毎日通った。
そのうち、何人かの店の人が私のことを覚えてくれるようになった。

そして、毎日同じ宿に滞在している人を代わる代わるこの店へ連れて行ったのだ。

そしてそして遂にマラケシュ滞在最終日。

店のおじさんたちに「スモールボス!!」と呼ばれるまでに私は成長したのだった。。。

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モロッコの食の場は、隠すことをしない。
スークや屋台を歩いていると、自分が口にしているものが、いくつもの工程を経ていること、そしてさっきまで自分と同じ命がある生き物だったということがとてもよくわかる。
月並みな言い方だが、命をいただいている。
そしていただいたからには、美味しく豪快に食べなければと思い、食欲が湧いてくるのだ。
モロッコの活気ある食文化は私に「食べることは生きること」だと改めて教えてくれる。
 
あー!お腹が空いてきた。
もしも「どこでもドア」があるのなら今行きたい場所はただ一つ。
44番の羊屋さん!!!
 

私と寅さん【アルハンブラ宮殿より】

私はその日、南スペインのグラナダにある世界遺産アルハンブラ宮殿」いた。

アルハンブラ宮殿とは、その昔スペインがイスラム教徒の支配下にあった時代に建てられた建物で、スペインという西洋のカトリックの国にいながらイスラム文化の風を感じることのできる不思議な場所である。

世界中から観光客が集まるスペイン屈指の人気観光スポットだ。


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(西洋の白い街並みとイスラム建築のフュージョン

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(軍事要塞のアルカサバ)

 

日本を離れて約二ヶ月半。

私には味噌汁と同じくらい恋しいものがあった。

それは山田洋次監督の名作映画「男はつらいよ」である。

東京の下町。葛飾区柴又を舞台に、日本全国を風が吹くまま気の向くままに旅する、

主人公の”寅さん”とその家族、そしてマドンナと呼ばれるヒロインたちが織り成す、

笑いあり、涙ありの人間味溢れる日本映画だ。

そしてこの映画は日本のロードムービーでもあると思っている。

その日、ネットで主人公の寅さんを演じた渥美清さんの没後20年というニュースを目にし、また自分自身が寅さんのような放浪の身ということもあり、無性にこの映画が見たくなったのだ。

私は出発半年程前に、この映画の第一作目の予告編を見て寅さんにハマった。

この予告編、完成度が非常に高いのである。

二分弱の短い尺の中で、起承転結がハッキリしていて、音楽の使い方が最高にかっこいい!!テーマソングの入り方なんてちょっと鳥肌ものだ。

これぞ日本映画!!銀幕!!実に粋なのだ。

見たことがない方は、ぜひYouTubeで見ていただきたい。もちろんその後見た本編は私のハートを鷲掴みにした。
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出発直前には、短期集中コースと称しDVDを借りまくったが、約30年間に渡って制作された人気シリーズなだけに、全49作品をコンプリートするのはなかなか大変だった。

好きな作品を二度三度、見直したりしていたものだから、結局全作品を制覇することなく旅立った。
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(特に好きな第30作目「花も嵐も寅次郎」)

ざっくり言うと、この映画のストーリーパターンは大体二つ。

一つは、主人公の寅さんが旅先で出会ったヒロインに恋してしまうパターン。

もう一つは、旅先や故郷で出会った若い女性や青年の仲をお節介に取り持つ、恋愛指南パターンである。

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アルハンブラ宮殿の高台から見たグラナダ旧市街、アルバイシン地区の街並み)
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 (スペイン国旗や欧州連合の旗が並ぶ)

美しい景色は、人をセンチメンタルな気分へと誘い、創造力を開花させる。。。

アルハンブラ宮殿の高台から、ボーッと景色を眺めていた私の創造力も見事に開花し、ここに寅さんが現れたらという妄想を開始した。

美しい街並みを見下ろしながら、少し感傷に浸っていると、突然寅さんが現れ「お嬢さん随分と日に焼けてるねぇ、一人旅かい?」なんて声をかけられ、身の上話をしながら街を散策することに。

そして些細なトラブルに巻き込まれ、右往左往しているうちにすっかり意気投合するのだ。

うん、悪くない。旅好きで好奇心旺盛なヒロインと陽気で愉快な寅さんは南スペインを横断していく。

そしてひょんなことから立ち寄った小さな街で、私たちは”真面目で爽やかだが、ちょっと変わり者”な青年に出会い、三人で一緒にジブラルタル海峡を目指すことに。

その青年は一見地味だが、実は壮大な夢を持っていて、その夢に共感した私はまんまと恋してしまう。

そしてそこはさすが寅さん。

経験がものを言い、その有り難いお節介が功をなし、ジブラルタル海峡到着と共に私はその青年とめでたく結ばれる。

「帰国しましたら、二人で柴又に遊びに行きますね。」とかなんとか言いながら、私たちはモロッコ行きのフェリーに乗り込み、ここで寅さんとお別れだ。

そして港町と海峡をバックにテーマソングが流れ、旅を続ける寅さんの姿が映し出されて映画は幕を閉じる。。。

そんな演出を街を見下ろしながら静かに妄想していた。

寅さんとスペインって全然合わないなーと思いながらも、彼がここに現れたらどんなに楽しいだろう!!

寅さんに出会えたらどんな旅先も最高の思い出になること間違い無しだ!
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ジブラルタル海峡を渡りモロッコへ向かうフェリーの上)

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ユーラシア大陸とはしばしのお別れ)

そんなこんなで現実は、寅さんにも爽やかな青年にも出会わないまま、この町を去り、四年ぶり二度目のモロッコへと渡るのだった。

 終

世界の国からこんにちは


♪こんにちは〜 こんにちは〜 
西の〜 国から〜♪
という歌詞ではじまる、
三波春夫の「世界の国からこんにちは」という曲が好きだ。
平和な曲調とシンプルだがスケールのデカい歌詞に気分が高揚して、思わずスキップしたくなる。
このワクワク感は、「三百六十五歩のマーチ」といい勝負だ。

小さい頃、ディズニーランドの
とにかく好きで、あの世界観にうっとりしては、平気で連続10回乗ったりする子供だった。
当然、両親は呆れているだろうが
懲りずに何度も付き合ってくれた。

地球儀をクルクル回して、指で止めて
は何度も空想旅行に繰り出し、
母が買ってくれた「地球人記」という写真集を食い入るように眺めて過ごしたことを覚えている。
思い返せば昔から心惹かれるものは、
変わっていない。

「世界の国からこんにちは」だなんて
呑気に言っていられるのは、平和ボケした日本人だからかもしれない。
イッツ・ア・スモールワールド」だなんて本当は綺麗事なのかもしれない。
そう思い始めた今だからこそ、
自分の足で行けるところに行ってみよー!!
ということで、安全第一で
女版寅さんになってきます!!
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